あの夏の続きを、今



重い足取りで1階に向かい、朝ご飯を少しだけ食べる。


ここ数日、胸がずっとつかえているような感覚がして、食欲も全然ない。


浮かない気分で制服に着替える。


今日は朝から夕方まで部活がある。


地区大会が終わっても、こうして部活に行っているということは────


そう、私たち吹奏楽部は、地区大会で金賞を取り、8月中旬に行われる県大会への出場権を得たのだ。


部員たちは皆、この上なく喜んでいた────けれど、私は素直に喜べなかった。



いつものように学校に行き、音楽室に入る。


ため息をつきながら荷物を自分の席のところに置き、楽器を用意する。


出欠が始まるまで、私は音出しをして待つ。


ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ……


順番に音を出していく。だが、高い「ソ」から上の音が、全く出ない。


掠れたように、虚しく息が抜けていくだけだ。


今日もやっぱり、音が出ない────


地区大会が終わってから、ずっとこうだ。


本番でソロを失敗してしまったショックからだろうか。あれ以来、私は今までトランペットを吹きこなしてきたのが嘘のように、うまく音が出せなくなってしまった。


今まで普通に吹けていた課題曲も自由曲もソロも、音がすぐに掠れたようになってしまい、最後まで吹ききることができない。


私がトランペットを吹いている瞬間。それは私が、嫌なことも悲しいことも全て忘れて、輝ける瞬間だ。


けれど、今は違う。


吹いても吹いても、どういうわけか、満足のいく音は一向に出てくれない。


吹けば吹くほど、不安になっていくばかりだ。


何をやっても拭えない不安のせいで、私の胸の内はどんどん苦しくなっていく。


部活の時も、そうでない時も、言いようのない苦しさに取り憑かれて、泣き出したくなる時さえもあった。
< 402 / 467 >

この作品をシェア

pagetop