あの夏の続きを、今
セイジと皆で夜店を回っているうちに、気がつけば空は真っ暗になって、だいぶ時間も過ぎていた。
「ねえハヅキ、今何時?」
「えっと…8時40分だね」
「お祭り、確か9時で終わりだよね。そろそろ帰る?」
「そうだね、あっ、でも…」
私はここに来てから、かき氷以外に何も食べていないことを思い出した。
最近、どうにも食欲が湧かなくて、今日もあまり何か食べる気にはなれず、食べ物もあまり欲しくはなかったので何も買っていなかったのだがら、さすがにかき氷だけではまずい、何か食べておかないと、と思った。
「私、焼きそば買っていきたい」
「でも、この時間だともう残ってないんじゃないかな」
「確かに」
そう言われて辺りを見回すと、焼きそばの屋台にいる人たちが既に片付けに取りかかっているのが見えた。
「あー、もう残ってないっぽい。諦めるかー」
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
そう言ってゆっくりと歩き出すハヅキたち。
私も後に続いて進もうとしたその時、「志帆!」と後ろから声がした。
声の主はセイジだ。
「腹減ってるんだろ?これ食べれば?もう冷めてるのは悪いけど」
振り返ると、セイジは食べかけの焼きそばの容器を片手に持って、私の方に差し出していた。
半分ほど残った中身に、ソースと青のりの付いた割り箸の先が刺さっている。
「え?いや、いいよいいよ、だって────」
セイジの食べかけなんて。新しい箸もないのに。
そう思って断ろうとすると、セイジは割り箸を引き抜いて上下を逆にし、太い方を下にして焼きそばの残りの中に突っ込んだ。
「ほら。箸は、こっち使えばいいから」
「え、あ、ありがとう……?」
断ろうにも断りきれず、私はその焼きそばの容器を受け取った。
ハヅキたちの後に続いて歩きながら、割り箸の太い方で恐る恐る麺をつまんで口へと運ぶ。
セイジの食べかけだなんて。いや、別に、気にするつもりはないのに────
何故だか胸の辺りがつかえるような感じがしてうまく食べられず、結局、二口三口食べたところで残った焼きそばはセイジに返してしまった。
食べられないのは元からストレスで食欲がないからなのか、それとも別の理由なのか、自分でも分からなかった。