あの夏の続きを、今


今日は午前中が個人練習とパート練習、午後から合奏だ。


出欠を終えて、いつもの練習場所である体育館の横に譜面台を立てる。


ロングトーン、スケール、リップスラー。相変わらず、音は掠れたままだ。


────練習しても、練習しても、上手くならない。


私の出したい音が、出せない。


やっぱり私は、浜百合高校に行く資格なんてないんだ。


いや、それどころか、トランペットを続ける資格なんてないんだ。


────やっぱり、高校生になったら、トランペットなんてやめてしまおう。


別の楽器をするか、別の部活に入るか。


だから、もう上手くなろうなんて考えるの、やめよう────


そう思って気持ちを切り替えようとしても、一音一音を出す度に、涙が零れ落ちそうになるばかりだ。



小一時間ほど経ったところで、カリンの「休憩ーっ!」という声が聞こえてくる。


私はマウスピースを口から離して、水筒のお茶を1口飲む。


カリン達3年生は皆で集まってワイワイ話し始め、2年生や1年生もそれぞれの学年で集まって遊び始めた。


────今の私は、とてもはしゃぐ気分にはなれない。


今にも泣き出してしまいそうな私は楽器と水筒を持ったまま、そっとその場を離れて一人で歩き出した。
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