あの夏の続きを、今
カリンはしばらく黙り込んでいたが、やがて再び口を開く。
「でも、カリンはわかるの。志帆は誰よりも練習頑張ってるし、夢を追いかける志帆は誰よりも輝いてる」
「え…」
「今はいろんなことで迷ったり、悩んでるかもしれないけどさ。でも、地区大会までの志帆は、夢に向かって頑張ってて、そんな姿がキラキラしてて、眩しく思えたんだ。その先に何が待ってるか、分からなくても」
「そう……なの?」
「うん!だから、志帆は志帆らしく、いっぱい輝けてたし……今だって、その夢は完全にに捨てたわけじゃないよね?それだけで志帆は、もう幸せなんだと思うの」
「……」
「だから、今は今のことだけ、考えてればいいと思うよ!今の志帆は、そのままで十分、眩しいんだから!将来のことは、急がなくたって、その時考えればいいの!」
「今の、こと……」
「まだ、出願まで時間はあるし、福原くんも待ってくれるんでしょ?」
「確かに、…………そうだよね」
「それに……トランペットパートは志帆だけじゃない。カリンや、後輩たちがいるもん!たとえ志帆の音が出なくなっても、みんなが吹いてるし……それに、カリンも、みんなも、志帆と演奏したいって思ってる」
「そっか。みんなが、いる……」
ふと耳を澄ますと、遠くの方からトランペットの基礎練習の音が聞こえてくる。後輩たちがパート練習をしているのだろう。
「だから……カリン、自分でも何が言いたいのか分かんなくなっちゃったけど……志帆は志帆にできることを、やればいいと思うよ」
「そっか……なんか、わかったような、わからないような……」
私はカリンに言われた言葉の一つ一つを噛み締めながら、もう一度空を見上げる。
どこまでも、高く高く、澄み渡る空。
届かない、でも、辿り着きたい────