あの夏の続きを、今
流れる綿雲の行方をぼんやりと目で追いつつ、青空の果てに思いを馳せていると、遠くの方から聞こえてくる後輩たちのトランペットの音が、いつの間にか基礎練習から自由曲の練習に変わっているのに気がついた。
「あっ」
「志帆、どうしたの?」
「さっきの所、アクセントがちょっと雑だし、タイミングも合ってない」
「さすが志帆、よく気付くね!」
私は大きく深呼吸すると、椅子から立ち上がって、水筒のお茶を一口飲んだ。
カラカラ、という氷の音と共に、麦茶が乾いた喉を潤す。
「……行かなきゃ」
私がそう言うと、カリンも私に続いて立ち上がる。
「そうだね、その意気だよ、志帆」
笑顔でそう言うカリンに、私は話しかける。
「なんか、カリン、大人っぽくなったよね。1年生の頃は、すぐ分からない〜とかできない〜とか言ってよく私に泣きついてきたのに」
「えー、そうかなー」
「なんだか、立場が逆転しちゃったみたいだね」
私がそう言うと、カリンは「えっへへーん、だってカリンは今、志帆より年上だもんね!」と言って、胸を張って腰に手を当ててみせる。
「ふふっ、確かにカリンは4月生まれだもんね」
「でも、志帆の誕生日ももうすぐでしょ!」
「うん!……ってか、カリンのドヤ顔、可愛すぎ。やっぱりカリンはカリンだね」
「え〜、どういう意味〜!?」
私とカリンは話しながら、ベンチを離れて体育館横の練習場所の方へと歩きだす。
「早く、みんなの所に戻らなきゃ」
「だね!急ごっ!……あっ、その前に」
「ん?」
急にカリンが立ち止まったので、私も足を止める。
「カリンは、いつだって志帆の味方だからね!志帆に何があっても、カリンは応援してるから!」
「うん!ありがとう、カリン!」
────答えはまだ、見つからないまま。
だけど、今も心の中に立ち込めるこの暗い雨雲は、きっといつか必ず晴れてくれるはず。
そんな予感を、なんとなくだけど感じ始めた。
いつか必ず、答えは見つかると信じて────
私は涙を拭いながら、カリンの後に続いて、後輩たちが待っている場所へと駆け出した。