あの夏の続きを、今
音楽室を出た私は、急いで自転車に乗ると、全力でペダルを漕ぎながらいつもの道を帰る。
青く透き通っていた空はみるみるうちに前方から迫り来る黒雲に覆われていく。
時折吹いてくる冷たい風に抗って、私は前へ前へと進む。
だが、丁度家までの道のりの半分ぐらいの所で、ついにハンドルを握る拳の上に、ぽたり、と大きな雨粒が落ちてきた。
────まずい。
そう思った時には、もう遅かった。
────ドォンッ、ゴロゴロゴロ!!
突然鳴り響いた大きな雷の音と同時に、大粒の雨が勢いよく、頭上から降り注ぐ。
地面に、カゴの中の荷物に、落ちてくる雨がバシャバシャと音を立てる。
私は急いで道の端に自転車を止め、レインコートを出そうとナップサックの中を探る。
────ない。
────嘘だ。レインコートが、ない。
不幸にして、今日という日に限ってレインコートを忘れてきてしまったらしい。
こうなったら、急いで帰るしかない。
私は前も見えないほどの激しい雨の中、全力で自転車を漕ぐ。
前へ前へと進んでいくごとに、雨が、私の髪を、服を、身体を、びしょびしょに濡らす。
それでも私は進み続けた。