あの夏の続きを、今
「…………志帆!」
レナも驚いて声を上げる。
あまりにも突然の再開に、私は、何か言わなければ、と戸惑っていた。
しかしレナは特に何か気にする様子も見せず、屋根の下に入るとすぐに喋り出す。
「あのね、塾から帰る途中で雨降り出しちゃって、咄嗟にここに駆け込んだの……レインコートも忘れちゃったし、しばらくここで雨が止むの、待とうかと思ってね」
びしょ濡れになったレナは、私と同じように濡れた髪から雫を滴らせながら話す。
その声は、仲良しだったあの頃と変わっていない。
私との間にあった隔たりをまるで感じさせないような、「いつものレナ」だ。
「レナ……立ってないで、こっち座ったら?」
私は思い切ってそう言ってみる。
「ほんと……?いいの?」
「うん」
「じゃあ、隣、座っちゃうね」
レナはそう言って、私の隣に腰を下ろす。
「こうして話すの、すっごく久しぶりじゃない?1年半ぐらい?」
「そうだね、それぐらいかな」
そんな会話を交わした後、妙な沈黙が二人の間に走る。
止まない雨音だけが、響いている。
私は沈黙を破って、思い切って言う。
「────ごめんね、レナ。私、あんなにひどいこと、してしまった」
するとレナは答えた。
「ううん。謝るべきはこっちだよ。私があんなことしなければ、こうはならなかったのに」
私は話を続ける。
「私ね、ずっと、後悔してたんだ。レナを信じられなかったこと。深い溝を作ってしまったこと。
……でも、本当は私、またレナと話したかった。また、一緒に遊びたかったの」
「うちも同じだよ、志帆」
レナは答える。
「ずっとずっと、志帆と話したくて、でも怖くて。何もできない自分が、すごく嫌だった」
その言葉の後に、レナは一呼吸置いて、また続ける。
「でも、志帆もそう思ってたのなら、怖がる必要なんてなかったのかもね」
「確かに、そうかもね」
私達は顔を見合わせて、あはは、と笑う。
────まるで、あの頃が戻ってきたみたいだ。
私とレナを隔てていた何かが、少しずつ消えていく。