あの夏の続きを、今
「この公園さ、私とハルトとレナで、小学生の頃からよく遊んだよね」
「うんうん!中学入ってからも、学校行くときここで待ち合わせしてたじゃん」
「しばらく来てなくて久しぶりに来たから、なんだか変な気持ち」
「うちも!同じだよー」
かつて「あんなこと」があったのが嘘のように私たちは一つ屋根の下、仲良く話していた。
レナと、またこうして話せるなんて。夢でも見ているかのようだ。
「ところで志帆、コンクールはどんな調子?なんか今、吹部がアツい、史上初の全国大会出場の一歩手前まで来てる、なんて噂をよく聞くんだけど」
突然、レナはそんなことを言い出した。
「えぇ!?そんな噂流れてるの!?流石に全国大会は尾ヒレが付きすぎじゃないかな。確かに全国に繋がる部門に出るのは初めてだけど、私たちはまだ地区大会を突破しただけで、これから県大会、中国大会を突破しないと、全国には出れないよ」
「そ、そっか、噂は大げさだったのね。でも、うちの吹部、確証はないけど全国行けそうな予感がするんだよね、顧問変わってからすごく上手になってるの、ど素人のうちが聞いても分かるもん」
明るい口調で話すレナに、私は答える。
「……いや、正直、私は自信がないんだ」
「どうして?」
不思議そうに私の顔を覗き込むレナに、私は、正直に心の内を語った。
上手く音が出せなくなってしまったこと。
ソロがあるにも関わらず、音が出なくなったせいで失敗ばかりしていること。
浜百合高校に行くかどうか悩んでいること。
これから自分はトランペットを続けるべきなのか悩んでいること。
セイジや松本先輩への気持ちが分からなくなっていること。
それらの悩みを抱えながら、重苦しい日々を送っていること。
────何もかも全て、包み隠さず、今の私が抱える思いをレナに打ち明けた。
土砂降りの雨は、未だ途切れることなく降り注いでいる。