あの夏の続きを、今
「それでね……」
私は続ける。
「どうすれば、前みたいに戻れるかなって、思ってるんだ」
その言葉を聞いたレナは、一瞬はっと目を見開いた後、ゆっくりと口を開いた。
「────志帆」
レナが私の名前を呼ぶと同時に、ほんの少しだけ、雨が弱まった気がした。
「戻るんじゃなくて、前に進むんだよ」
「────!!」
レナのその言葉が、私の心を強く突き動かす。
「戻るんじゃ……なくて……」
「そう。前に進むの」
私の方を向いて、しっかりと意思のこもったその声でレナはそう言うと、再び前を向いて、雨の降る空を見つめながら語り始めた。
「うちね、丁度去年の今頃、部活でなかなか上達できなくて、みんなの足引っ張ってばかりで、ずっと悩んでたんだ。しかも、丁度その頃、色々あって、ハルトとは別れちゃってね」
「え……別れたの?」
「うん。それで、ハルトとももう話せなくなっちゃって、それでさらに落ち込んで、もうどうしたらいいのか、何もかも分からなくなってた時期があったの。
それで、ある日、バスケ部の顧問に、どうやったら前みたいに上手くやれてた頃に戻れますかって相談したんだよね。そしたら、こう言われたの。
『戻るんじゃなくて、前に進むんだ』ってね。
きっと、志帆も、あの頃の自分と同じなんだと思う」
「そうだったんだ……」