あの夏の続きを、今
「あのね、志帆」
レナは再び、私の方に向き直って言った。
「うちら、中学生になってから、色んなことが変わったと思うの。いつも一緒にいた、うちと志帆とハルトも、気がつけばみんな、バラバラになってしまったし。
前に進むんだって言われて、気づいたの。うちらはいつまでも同じじゃないんだって。変わっていくものもあるんだって……そう思ったら、なんだか楽になれたの」
土砂降りだった雨は、少しずつ弱まってきている。
「だからね……失ったものはもう戻ってはこないけど、また、ここから新しい何かを生み出すことはできるんだ」
レナの言葉の一つ一つが、胸の奥に染み入っていく。
そして、私の心を覆い隠していた真っ暗な雨雲の間から、一筋の光となって降り注ぐ。
「だからね……志帆。うちはもう一度、志帆と、友達になりたい!」
「────!!」
レナの明るくはっきりとした声が、真っ直ぐ、私の元に届く。
「私もだよ、レナ!私も、もう一度、レナと友達になりたい!!」
「志帆……!」
「私も……ここからまた、始めるの。新しい自分になって、もう一度!」
その時────
「あ!見て、志帆!晴れてきたよ!」
レナが指差す方を見ると、遥か彼方の空、雨雲の隙間から、青空が顔を覗かせていた。
そして、太陽の光が、地上に降り注いでいる。
降り続いていた雨も、いつの間にか、小雨と呼べるぐらいに弱まっていた。
「雨も、止んできてるね。このくらいなら、もう帰っても大丈夫かな」
「そうだね!」
私は屋根の下から一歩踏み出す。
頭上では、風に吹かれた雨雲が、少しずつ細切れになって、そこかしこから僅かな青空が見えている。
「じゃあ、濡れた制服乾かさなきゃいけないし、私はそろそろ帰るよ。レナ、本当にありがとうね」
「こちらこそ!志帆、本当にありがとう!」
「うん!あっ、それから……」
止めてあった自転車に乗ろうとしていたレナが、歩みを止めてこちらに振り返る。
「私、新学期始まったら、またハルトと話そうと思うの。一緒にどこか行かないかってね」
「いいと思う!うちも連れてってよ!」
「うん!約束だよ!じゃあね!」
「バイバーイ!また、新学期に会おうね!」