あの夏の続きを、今
レナと別れ、私は再び自転車に乗ると、坂道を上へ上へと登っていく。
途中で自転車から降りても、私は小走りで進んでいた。
僅かに降る雨が、私の身体を濡らす。
けれど、それすら今の私には、心地良かった。
────やっと、分かった気がする。
雲の切れ間から覗く青空を眺めながら、私は自分の胸の内の思いと再び向き合った。
────前に、進むんだ。
そう思うだけで、私の心の雨雲も、少しずつ晴れ模様へと変わっていく。
今までの私はずっと、「過去」に囚われたままだった。
どうすれば松本先輩みたいな音が出せるか。どうすれば前みたいな音が出せるか。どうすれば今までの自分に戻れるか。
────でも、違うんだ。
私たちは、変わっていくんだ。
レナやハルトとの関係。
高校生になって、違う楽器を手にした松本先輩。
少し成長して、大人っぽくなったカリンやセイジ。
私たち吹奏楽部が、目指す目標。
中1の頃から比べて、たくさんのものが変わった。
────だから、私も変わらなきゃいけないんだ。
前に、進まなきゃいけないんだ。
もう一度、ここからやり直すんだ。
私は広がっていく青空に向かって駆け出す。
だとしたら────
私のするべき事は、もう分かっている。
雨は、もう完全に止んでいた。
明日からだって、まだ間に合う。きっと。
強い意思を胸に、私は坂道を駆け上がっていった。