あの夏の続きを、今
前に進む勇気
【2016年 8月10日────県大会前日】
あれから、日に日に私の音は、自分でも目に見えて分かるほどに変わっていった。
地区大会の前の自分を越えられるぐらいには、きっと、上達しただろう。
同級生の部員たちには、「志帆、なんだかすごいトランペット上手くなったね!」「前も上手かったけど、ここ数日ですごく変わった気がする!」と褒められたりした。
寺沢先生も、「広野、随分音が良くなってるじゃないか。やはり俺の見込みは間違ってなかったな」と言っていた。
────そして。
ついに、県大会本番の日の前日になった。
『県大会まで あと 1日!』
『中国大会出場祈願』『ファイト!』『目指せゴールド金賞!』
ホワイトボードのカウントダウンの大きな字の周りは、たくさんの部員たちの気合いのこもったメッセージで溢れかえっていた。
今日は練習時間はいつもと同じ午前と午後の両方だが、今日だけは一日中合奏をすることになっている。
だが、寺沢先生の指導のおかげですっかり上達した部員たちには、もうこの期に及んで新しい指摘が飛んでくることもなかった。
本番前に無理をしないように、という寺沢先生の気遣いで、合奏の合間の休憩時間はいつもより長く取られた。