あの夏の続きを、今


やがて、バスはK市民会館に着いた。


先輩の指示で楽器を積み下ろして、楽器置き場となっている部屋に運ぶ。


その途中で、見慣れない制服を着た他校の人たちとたくさんすれ違った。


私の知らない人たちが、私たちと同じように楽器を持って、準備や片付けをしている様子────それを見るだけで、なぜだか分からないけれど、ワクワクしてきた。


ケースを開けると、あのいつものボロボロの学校の楽器が顔を出した。


私以外の3人のパートメンバーは皆、ちゃんとした綺麗な楽器を持っている。


松本先輩もアカリ先輩も、使っているのは学校の楽器だけど、十分に綺麗だ。


そして、カリンは────


この中で誰よりも目立つ、ひときわ綺麗な銀色の輝きを放つ、新品のトランペットを持っている。


そう、カリンは、もう自分の楽器を買ってもらっていたのだ。


私のだけ、こんなにボロボロ。


私は、この吹奏楽祭が終わったら、自分の楽器を買ってもらうことになっている。


早く、私も、自分の楽器が欲しい。
< 44 / 467 >

この作品をシェア

pagetop