あの夏の続きを、今
「それで、広野さん、言いたいことって?」
私が勇気を出すより先に、先輩の方から声をかけられてしまった。
「私────」
────今は周りには誰もいない。
このまま言ってしまおうか。
だけど、言葉に出す勇気がどうしても出せない。
言ってしまえば、全てが終わってしまう。
この温かい声を聞くことも、優しい笑顔を見ることも、もう永遠になくなってしまう。
────このまま何もせずに終わることもできる。
そんな思いが一瞬、頭を過ぎる。
だけど、それをかき消すように、頭の中に蘇る声があった。
────“戻るんじゃなくて、前に進むんだよ”
私を変えた、レナの言葉だった。
そうだ。私は、前に進まなきゃいけない。
このまま立ち止まっていても、いずれ別れは訪れてしまうのだ。
それなら────
私は弾けそうなほど高鳴る胸を震える手で抑えつつ、曲の出だしを吹くときのように、すっと息を吸って───
「私────先輩のことが、好きです!」
松本先輩の目を見て、私は言葉に出した。