あの夏の続きを、今
────やっと、伝えられたんだ。
────ずっとずっと、伝わることなく秘めてきたこの気持ち。
────今はもう、伝わっているんだ。
それだけで、心が軽くなる。
先輩の言葉の一つ一つが、頭から離れない。
これで終わりだって、思っていたのに。
これからも、私の音は、松本先輩へと届くんだ。
そして、私はこれからも、松本先輩の音を聴くことができるんだ────
今日、ここで、一つの恋が終わった。
だけど私は、終わった恋と引き換えに、たくさんの大切な何かを得た気がした。
これからも音楽を続けていく原動力となり、私にとっての目標である松本先輩の存在。
恋よりもずっとずっと強く、大切で、温かい想いを、私は抱いていた。
前へと進む度、涙が零れ落ちる。
けれど不思議と、悲しくはなかった。
これは終わりではない。
新しい夢の始まり。それに向かって、私は今、踏み出そうとしている。
────明日。全力を尽くそう。
私がここまで辿り着くために応援してくれた、皆のために。
夢の始まりとなる舞台に、挑むんだ。
────中国大会、そして全国大会を目指して。
だから────どうか最後まで、私の成長を見届けていてください。
松本先輩────大好きです。
そう心の中で呟いた。
傾いた夕日に照らされた坂道が、涙で滲んで金色に染まる。
私は上へと続く道を、ただひたすら登っていった。