あの夏の続きを、今
ステージに足を踏み入れてから、椅子や打楽器がきちんと並ぶまではあっという間だった。
ひな壇の1番上、アズサちゃんとエリカちゃんの間に、私は座る。
そして、それぞれの場所に座った部員たちの顔を見回す。
一点の曇りもない、目標をしっかりと見据え、希望に溢れた皆の表情。
ここにいる誰もが、まだこの学校で誰も知らない新しい舞台を目指している。
そのための大きな一歩を今、踏み出そうとしている。
私は次に、客席の方を見た。
既にたくさんの人で埋まっている客席の真ん中辺りに、様々な制服を来た高校生の集団がいる。
────間違いない。あれは私たちの先輩だ。
その中には、松本先輩もいた。
────昨日の言葉通り、来てくれたんだ。
松本先輩だけではない。昨日やって来たシオリ先輩や女子の先輩たち、それに昨日はいなかった先輩も何人かいて、その中にはアカリ先輩もいる。
────皆、きっと、私たちを応援しに来てくれたんだ。
その時、ステージの照明がぱっと明るくなる。
────いよいよだ。私たちの演奏が始まる。
『プログラム14番、O市立J中学校
課題曲 Ⅰ
自由曲 福島弘和 作曲「じんじん」』
アナウンスが流れ、観客の拍手と共に寺沢先生が入場してくる。
指揮台の上に立った先生は、私たち一人一人を見回してそっと微笑むと、指揮棒を構えていつもの真剣な表情に戻った。
────2年半、私はたくさんの人に出会って、たくさんの出来事を経て、成長してきた。
だから、その全てを、この12分間に込めて────
私は楽器を構える。