あの夏の続きを、今
静寂の中、指揮棒が振り下ろされる。
────タカタッタカタッタカタッタッ、パーンパパッパッパーーーン!
空へと届きそうなほど、力強くしっかりと響くファンファーレ。
音楽室の窓からいつも見ていた、青空に浮かぶ雲を思い出しながら。
私たちが描く夏の夢を、この「マーチ・スカイブルー・ドリーム」に乗せて。
イントロのファンファーレの後は、木管楽器が爽やかなメロディーを奏でる。
低音楽器の表打ちに、中音楽器の裏打ち。一つ一つの単純な動きの中で、それぞれの思いが重なり合う。
低音楽器のメロディーを経て、今度は私たちトランペットも主旋律に加わる。
輝く太陽。透き通った青空。遥か彼方の雲に向かって何度も奏でた音。
一つ一つの思い出を、自分の音で描いていく。
3rd、2nd、1stと重なっていくベルトーンの次は、マーチの中間部、Trioに入る。
トランペットの出番がない17小節の間、私はこれまで歩んで来た日々に思いを馳せる。
松本先輩と出会ったばかりのあの頃から、どれだけ上手くなれたかは分からないけれど、今の私の音はきっと、これまでで最高の音だと、今ならきっと、胸を張って言えるだろう。
トランペットがリズムを刻み、フルートやピッコロがそよ風のようなメロディーを奏でる部分の後は、冒頭のファンファーレと同じリズムで曲が展開する。
そして、クレッシェンドと共に、光に向かって皆で歩いていくように、一体となってメロディーを奏でる。
────いよいよ、私のソロだ。
大切な人がここにいるから、そして、掴みたい夢がすぐそこにあるから。
私は、私の音を奏でるんだ────
シンバルの一打と共に、すっと息を吸う。
────ラーラーラーーラー、たったったったーん、パパパーン!
────決まった!
ホールの天井を超えて、青空へと駆け上がるようなその音に、全員の奏でるフォルティッシモの音が続く。
────タタタ、タンッ。
課題曲が終わった。
満足のいくソロができて、私は一安心する。