あの夏の続きを、今


薄暗い舞台裏を抜けて、明るいロビーへと戻って来ると、一気に緊張が抜けて安心する。


それと同時に、ホールから出て来た先輩たちが私たちに手を振っているのが見えた。


もちろん、そこには松本先輩もいる。


走り出したくなる気持ちを抑えて、私は部員たちと一緒に一旦楽器置き場へと戻ってくる。


「志帆〜!!ソロ、すごく良かったよ〜!カリン、感動しちゃった!」


そう言いながら飛びついてくるカリンの目には、既に涙が溜まっている。


「カリン、泣くの早すぎっ!」

「だってー、ほんとに良かったんだもん!」

「えへへ、ありがとね。カリンだって、2曲連続1stなのによく頑張ってたよね。凄く決まってたよ。お疲れ様」


それから私は、4人の後輩の方に向き直る。


「アズサちゃんも、ユイちゃんも、エリカちゃんも、モモちゃんも……みんな、お疲れ様!とっても良い音だったよ!」

「えへへ」「先輩こそー!」「楽しかったです!」「最高の演奏でしたね!」


トランペットの後輩たちも、皆、自分たちの演奏に満足しているようだ。


楽器をケースにしまいながら辺りを見渡すと、部員たちは皆、抱き合って喜んだり、涙を流したりしている。


それぞれ表情は違えど、誰もが皆、明るく輝いて見える。


皆も私と同じ気持ちなんだろう。これほどまでに上手く、そして楽しい演奏が出来たのは、今まで初めてなんだから。


そして────これまで積み上げてきたものが出したこの成果に満足しているからこそ、皆、良い結果が出るのを確信しているのだろう。
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