あの夏の続きを、今
楽器の片付けを終えた私は、カリンと共に急いでロビーへと向かう。
きっとそこで、先輩が待っているから。
ロビーに入るとそこには、先ほど客席で演奏を聴いていた先輩たちがまだそこにいた。
「あ、志帆、松本先輩だよっ!」
私が東神高校の制服を着た松本先輩を見つけると同時に、カリンが声を上げる。
「────先輩!松本先輩!!」
昨日会ったばかりの大切な人のもとへ、私は駆け出していく。
カリンも、その後に続いてやって来る。
「広野さん、山内さん……お疲れ様!」
変わらない笑顔で、先輩は振り向く。
「演奏、とっても上手だったよ!今まで僕が聴いてきた中で最高の演奏だった!僕、感動しちゃったよ」
「ありがとうございます!きっと中国大会に行けるって、信じてます!」
私がこの音に込めた、たくさんの想い。きっと、先輩にも届いただろう。
これから先も、きっと、こんな風に、私の音を届けられたら────
そう思いながら先輩と私とカリンで言葉を交わしていると、突然、後ろから知らない女の人の声がした。
「この子たちが志帆ちゃんとカリンちゃん?初めまして〜!ずっと会いたかったんだぁ〜」
やけに明るく元気なその声に振り向くと、松本先輩と同じ東神高校の制服を着た女子がいた。
私の知らない人なのに、どこか見覚えのあるその姿。
確か、昨日見に来た先輩たちの中にいた知らない人が、この人だったような────
「ちょ、ちょっと、いきなり話しかけてもこの子達びっくりするから。ちゃんと自己紹介して」
松本先輩にそう言われ、状況が飲み込めない私とカリンを前に、その人は言う。
「ごめんごめん、驚かせちゃったね!私は難波 舞(なんば まい)って言うの。ソウく……じゃなくて、松本くんの同級生でね、中学で一緒にトランペットやってたんだー!
まぁ、2年生の秋に転校しちゃったから、君たちは私のことを知らないわけなんだけど。カリンちゃんはお兄ちゃんから聞いてるかもね」
そこまで聞いた時、私は昨日の松本先輩の話を思い出す。
先輩が言ってた、「昔中学のトランペットパートにいた同級生」って────この人のことだったんだ。