あの夏の続きを、今


「それにしてもさぁ……」と、シオリ先輩が唐突に口を開く。


先輩が指差した先には、いつの間にか私たちから離れて、ホールの扉の前で今の演奏が終わるのを待っている松本先輩と舞先輩の後ろ姿があった。


二人並んで、楽しそうに笑い合っている。


「いい加減あの二人、付き合っちゃえばいいと思うんだよね。志帆ちゃんとカリンちゃんは知らないと思うけど、私は中学の頃からずっと見てきてるから分かるの。二人の様子は絶対、友達以上の何かの気持ちを秘めてるように見えるんだよね。

あんなことがあったのに、松本くんは舞ちゃんが戻ってくる日を健気に待ち続けてたわけだし。舞ちゃんだって、うちの部に戻ってくるまでにいろいろ悩んでたけど、話聞いてたらもはやただの同級生とかそういうレベルじゃない、特別な思い入れを感じたよ」

「うんうん、うちもそう思う」と、アカリ先輩が続く。


「私は舞先輩のこと今日初めて知りましたけど、なんとなく、お似合いな気がします」と私は言った。


「幸せになるといいね」と言うシオリ先輩に、私は笑顔で相槌を打つ。


ちょうどその時、演奏が終わって、ホールのドアが開いた。


ドアの前で待っていた松本先輩と舞先輩は、二人で何やら話しながらホールの中へと入っていく。


「志帆、一緒に演奏聴きにいこ!」と言いながら、カリンは私の手を取る。

「うん!」


私はカリンの後に続いて、ホールの客席へと向かった。

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