あの夏の続きを、今
そして────
「続いて、吹奏楽コンクール中国支部大会へ出場する、代表校を発表致します」
いよいよだ。
私たち吹奏楽部の、初めての試みの成果が。
新しい夢への第一歩が、ここに懸かっている。
「演奏順に、3校発表します」
再び、会場に緊張感が走る。
「6番、O高校附属中学校」
その瞬間、私たちの学校の隣に座る集団からわっと歓声が上がった。
そんな中で私は、ぎゅっと目を閉じたまま、祈り続ける。
「10番、O市立K中学校」
寺沢先生の前任校で、強豪校のK中学校だ。
残りの枠は1つだけ。
────私たちは14番。発表は演奏順だから、まだ希望はある。
次に私たちの学校の名前が呼ばれれば、中国大会への出場が決まるのだから────
一瞬の静けさの後、ステージの上の男性は、最後の代表校の名前を読み上げた。
────その瞬間、私の手から、すっと力が抜けた。
閉じていた目を、そっと開く。
そして────目の前の現実の存在を確かめるように、何度も何度も瞬きをした。
「みんな────ありがとう」
私は周りの席に座っている、カリンと4人の後輩たちに向かって微笑んだ。
その瞬間────私の目から、思わず涙が零れ落ちる。
それに合わせるかのように、カリンも、後輩たちも、皆それぞれ、涙を流し始めた。
────けれど、皆、その目は不思議と、笑っているように見えた。
私の頬を伝う涙も、昨日と同じ、悲しみのない温かな涙だった。
遠くで見守る先輩たちも、よく頑張ったね、と言うように、涙を流しながらも温かい微笑みを浮かべていた。
私は涙で濡れた瞳を、再びそっと閉じた。
トランペットとの出会い、出会った人々、交わした言葉、抱えてきた想いの数々。
それら全てが一筋一筋の暖かな光となって、私の心にそっと染み入った。
────こうして、私たち吹奏楽部の夏は、幕を閉じたのだった。