あの夏の続きを、今
レナとハルトと分かれ、私は保健室を探しに校舎に入る。
(あれ、えーと、保健室って、どこ……?)
冷静に考えたら、今日初めてここに来た新入生に、保健室がどこにあるかなんて分かるわけがない。
階段を上ったり下りたり、あちこち探し回ってみるが、見つかるのは普通の教室と、私と同じ真新しい制服の新入生たちだけだ。
(もしかして、隣の校舎かな……?)
そう思い、渡り廊下を通って行くが、そこにあるのは3年生の教室だけで、今は人影もない。
(やっぱり違うか……ここは3年生の所っぽいし、早く出なきゃ……)
血の滴る右膝の傷口をティッシュで抑えながら、私は元の方向に戻ろうと3年生の教室に背を向けた。
その時────
「あの……ちょっとごめんね、君、もしかして、1年生?」
…………!!!!
突然後ろから聞こえてきた知らない男の人の声に、思わず飛び上がりそうになる。
(も、もしかして、1年生がこんな所に来てたから、怖い3年生に目をつけられたとか………!?それか、先生に見つかって怒られるのかも……!?)
そう思い、恐る恐る振り向く。
「は、はい、そうですが………」
「そっか。君……大丈夫?なんか困ってそうだけど………」
振り向いた私の元にそっと降り注いできたのは、私の思う「公立中学の怖い上級生」のイメージとも、「勝手な行動を叱る先生」のイメージとも全く正反対の、優しく柔らかな声だった。
その声に導かれるように、顔を上げ、私よりも随分背の高いその人の顔を見上げる。
「あの……えっと………」
突然の出来事に、返す言葉が見つからず戸惑う。
その人は、眼鏡をかけた、学ラン姿の男子生徒だった。名札に「Ⅲ」のバッジがあるということは、3年生だ。
「僕、忘れ物を教室に取りに来てたんだけど、そしたら君が、膝が痛そうな感じでうろうろしてるのが見えて………その、制服とかカバンが新品っぽいから、もしかしたら1年生が何か困ってるのかなって思って」
その人は少し戸惑ったような、照れくさそうな様子で話す。