あの夏の続きを、今
私はもともと、困った時に誰かに頼ったり助けてもらったりするのは嫌いで、何でも自分で何とかしたい、と思う方なのだ。
だけど、松本先輩に教えてもらう時だけは、何かが違う。
松本先輩に教えてもらうと、何故だかわからないけれど、どこか安心感のようなものがあって、向上心も湧いてくる。
松本先輩からは、後輩として、もっともっと色んなことを吸収していきたい、そう思える。
向こうの方からは、松本先輩のトランペットの綺麗な高音が聞こえてくる。
トランペットは音が高くなればなるほど、音を出すのが難しくなる。
高い音ほど、息の圧力が必要で、でも下手に力んでしまうと音が出にくくなってしまう。
けれど、松本先輩は、そんな高音域を、簡単そうに吹きこなしている。
それだけ上手いということだ。
トランペットの魅力はやっぱり、高音域にある。
私も、松本先輩みたいに、あんな綺麗な高音域が吹けるようになりたい────
私が心から尊敬する松本先輩に、少しでも近づきたい────
松本先輩の後輩として、相応しい姿でありたい────
そう心から願った。