あの夏の続きを、今
楽器を出してから、私は音楽室の東側の窓の横で基礎練習をする。
反対側、西側の窓の横では松本先輩が練習をしている。
二人しかいない静かな音楽室に、雨音とトランペットの音だけが響く。
松本先輩の奏でる「雲の信号」の優しいメロディーと、まだ初心者感の抜けない私の音。
距離は離れているのに私の音が松本先輩にしっかり聞こえてしまうから、なんだか恥ずかしい。
────あとどれくらい頑張れば、私は松本先輩みたいな演奏ができるようになるのだろうか。
私はいつか、松本先輩のような先輩になれるのだろうか。
先輩の濡れた白いシャツを見ながら、そんなことを思う。