あの夏の続きを、今



そして、しばらく2人で練習し、たった二人での朝練の時間は終わった。


楽器を片付けて、松本先輩と一緒に誰もいない静かな音楽室を出る。


外は相変わらず、大雨が降り続いていた。


「そうだ広野さん、僕丁度折りたたみ傘持ってるから、途中まで入っていく?楽譜あんなにびしょびしょになってたし、これ以上濡れても大変でしょ」


「えっ………いいんですか?」


確かに、1年生の教室がある西棟の昇降口までは少し距離がある上に屋根がないので、普通に歩いて行ってたらまたびしょ濡れになってしまうだろう。


「じゃあ、お言葉に甘えて、途中まで一緒に行ってもいいですか」

「大丈夫だよ。じゃ、行こっか」


松本先輩はそう言いながら、音楽室の鍵を閉めた。


「それにしても先輩、折りたたみ傘があるなんて準備良すぎじゃないですか?自転車通学ならレインコートで十分なはずなのに」


先輩の後に続いて階段をとんとんと降りながら、その背中に話しかける。


「それもそうだけど、ほら、ここから3年生の教室まで遠いし、屋根ないじゃん。

広野さんの代がまだ入学する前に、ものすごい雨が降ったことがあって、教室に行くまでの間に楽譜びしょ濡れにしちゃったんだよね。それ以来ここの移動用に準備室に折りたたみ傘を置いてたんだよ」

「そうなんですね、私も今度から置いときましょうかね」


先輩の言葉に応えつつ、二人でのんびり歩いて教室棟の方へと向かう。
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