あの夏の続きを、今
別棟を出てすぐ近くは、1年生の自転車置き場になっている。
レインコートを柱や自転車にかけて干す人、タオルで髪を拭く人、びしょ濡れになりながら昇降口までダッシュする人などが次から次へと現れ、慌ただしい光景が広がっている。
「みんなこんなに大変そうなのに、僕たち余裕で傘に入れてるって、申し訳ないけどなんか優越感感じない?」
「ですね〜」
松本先輩の差す傘の中に、二人で入ってゆっくり歩く。
────傍から見たら、恋人みたいに見えるだろうか。なんだか照れくさい。
他愛もない会話を交わしながら、時折先輩の顔を見上げると、その優しい笑顔につられて私も自然と笑顔になる。
そういえば、先輩とこうやって雑談することって珍しいかもしれない。
基本的に先輩とは、部活で教わる時以外に話す機会があまりないからだ。
部活以外の場面での先輩は、どんな感じなんだろう。こうしていつも優しい笑顔でいるのだろうか。少し気になったりもする。