あの夏の続きを、今
屋根の下に入ると同時に、後ろから聞き慣れた声がする。
「おはよ、志帆」
「あ、ハルト!おはよう!」
やってきたのはハルトだ。
胸が、どくん、と音を立てて弾む。
私は慌てて青色の先輩の傘を畳みつつ、他愛もない会話をする。
「傘あるの、準備いいね。俺、チャリ置き場からここ来るまでに濡れちゃってさー」
「あ、この傘…私が用意してたわけじゃなくて、その……色々あって、朝練の後に先輩が貸してくれたんだ」
まだ少し熱を帯びたまま落ち着かない心を隠すようにしながら、昇降口で上履きに履き替える。
ふと外を見ると、数人の男子たちと一緒に濡れたレインコートや鞄を振り回して、水しぶきを飛ばして遊んでいるセイジが視界に入った。
そこに聞き慣れた女子の声が飛んでくる。
「ちょっと、そこ、狭いんだから暴れないのー!」
いつの間にかやって来たレナが、通路を塞ぐ男子たちの集団を制する。
あの人達は、いつも通りだ。
変わらない日常の風景を見て、私の心も一旦落ち着いた。
─────また、いつもの日々が始まる。