あの夏の続きを、今
私は構えていたトランペットをゆっくりと下げ、松本先輩の音に聞き入る。
先輩は、今日演奏する曲を一通り吹いた後、「雲の信号」を吹いている。
ポップスでは明るく華やかな高音を響かせるが、「雲の信号」のようなクラシカルな曲になると、優美で繊細で、大人っぽい音になる。
凛とした背の高いその姿がなんだか輝いて見えるのは、その輝くような高音のせいだろうか。
それとも、眩しい夏の日差しのせいだろうか。
私は正面に立てた譜面台のほうに向き直ると、トランペットをもう一度構えて、曲を吹く。
私もいつか、先輩みたいな音が出せるようになりたい。
先輩に、認めてもらいたい。
一人前の後輩として。
松本先輩を心から尊敬する、後輩として。