あの夏の続きを、今


学校に着くまでの間、ずっとそのことばかり考えていたけれど、結局いいアイデアは思いつかなかった。


学校に着いてから、音楽室に入って、楽器を片付ける。


ちょうど、隣には松本先輩がいたので、思い切って聞いてみた。


「あの、松本先輩、…先輩の好きなものって、何ですか……?」

「え、好きなもの!?なんか、すごくざっくりした質問だね」


本当はもっと良い質問の仕方があったはずだと、自分でも分かっている。


でも、男子に「好きなキャラクター」を聞くのは、ちょっとどうかな……?とか、下手にいろいろ聞いたら引退式にプレゼントをあげることがばれてしまうかもしれない、と勝手に思っていたのだ。


「こんなざっくりした聞き方しかできなくて、申し訳ないんですけど」

「えー、好きなもの?んーー、愛情?」


先輩が真顔でそんなことを言うので、私は思わず笑いながら、「いやいや、そんなんじゃないですって!」と言う。


「えー、なんだろ、ホットヨーグルトの詰め合わせ?」と笑いながら言う先輩。

「なんですかそれは…っ!」


再び笑いがこぼれる。


「えーと、だから、なんて言ったらいいのか分かんないんですけど、その……」


「キャラクター的なもの?」


そう口を挟んできたのは、隣で私たちの会話を聞いていた別の先輩だった。


「そうそう、それです!」と私が言うと、松本先輩が「えーと、また今度考えとくね」と言った。


「え………は、はい、分かりました」


……また今度って……買いにいける日は明日しかないのに………。


仕方ないから私は楽器をしまって、帰る準備を始める。


さらに日が傾いて、いつものように音楽室がオレンジ色に染まっていく。


早く、リサが待っている夏祭りの会場に行かないと。
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