あの夏の続きを、今
松本先輩たちが去ってから、私とリサは、校舎前の階段に座って焼きそばを食べる。
「志帆、どうしたの?」と笑顔で聞いてくるリサ。
「どうしたのって……どうしたの?」
「なんか、志帆、さっきから嬉しそうに見えるから」
「そう……?多分、先輩に会ったからかな」
「あ、さっきの人?」
「うん、吹奏楽部で同じパートの先輩だよ」
リサは流石だ。私の感情を、すぐに見抜いてしまう。
────でも、私はただ嬉しいだけではないような気がした。
松本先輩の周りにいて、松本先輩と楽しそうに話している女子の先輩たち。
あれを見ると、なんだかモヤモヤするような、あまり良い気分はしないような気がするんだけど────
そのとき、後ろから声がした。
「よっ、志帆と知らない人!」
その声に振り返ると────
「あっ、セイジ!」
「誰?」とリサが言うので、「A組の福原。幼なじみみたいなもんだよー」と答えた。
「あれ、お前、いつもの3人で一緒じゃないのかよ」とセイジが言う。
「あー、誘ったんだけど、用事あるからって、断られちゃって」
「えー、なんだそれは」
それからしばらくあれこれ話してから、セイジは「じゃあな」と言って去っていく。
「バイバイ、ダメ委員長~」
「まだそんな名前で呼んでたのかよっ!」
セイジの姿が完全に見えなくなってから、「男の子の幼なじみか……漫画とかの世界だったら絶対恋に落ちるパターンだね」と、焼きそばを頬張りながらリサが言う。
私は、「ないない、セイジは絶対ありえない!」と全力で否定した。
それから、私とリサはあっという間に焼きそばを食べ終えた。
気がつくと、空はもうすっかり暗くなっている。
でも、お祭りの賑わいはまだまだこれからだ。
「次は何食べる?」
「んー、かき氷!」
「よっし、じゃあ、買いに行こう!」
そして、私たちは、賑わう人混みの中へと駆け出していった。