あの夏の続きを、今
昼ご飯を食べてから、楽器を積み込む。
朝よりももっと、緊張が高まってくる。
ふと、体育館のほうを見ると、窓からハルトの姿が見えた。
私はその姿に向かって手を振る。
ハルトもそれに気づいて、手を振り返してくれた。
………よしっ!
心の中でガッツポーズをする。
頑張らなくっちゃ。
ハルトも、きっと応援してくれてるはずだ。
積み込みを終えて、カリンと一緒にバスに乗ろうとすると、後ろから前田先輩に肩をつつかれた。
「カリンちゃん、志帆ちゃん、今日のプレゼントはちゃんと用意してるね?」と、ひそひそ声で前田先輩が言ってくる。
「はい!」
「大丈夫です!」
前田先輩が言っているのは、コンクール本番が終わった後、引退式で松本先輩にあげるプレゼントのことだ。
松本先輩に「好きなもの」を聞いたけど結局聞き出せなかった私は、その後前田先輩から「松本先輩は犬好きらしい」という情報をもらった。
だから、あの後、私は犬がモチーフになっているグッズを、プレゼントとして買ったのだ。
これを渡す時も、近づいてきている。
本当に、松本先輩と演奏できるのは、今日が最後なんだ────
名残惜しい気持ちを抱えて、バスに乗る。
そして、部員たちを乗せたバスは、学校を後にして出発した。