あの夏の続きを、今
会場は、吹奏楽祭の時と同じ、K市民会館。
バスが会場に着いてから、照りつける日差しの中、楽器を建物の中まで運ぶ。
「涼しい~っ!」
建物の中に入った瞬間、外の暑さが冷房の涼しさへと変わって、真夏だな、と実感する。
前と同じような光景。様々な制服を来た人たちが、楽器を持ってあちらこちらを移動している。
けれど、吹奏楽祭とコンクールでは、やっぱりどこか雰囲気が違う気がした。
1年に一度の、大切なコンクール。
それぞれの学校に、それぞれの想いがあるはずだ。
たくさんの想いが、この会場に詰まっている────そんな気がする。
私たちも、私たちの精一杯の演奏を、届けないと。
そう思いながら、打楽器運びを手伝う。
それが終わったら、自分の楽器を用意する。
銀色のトランペットは、普段と違う場所の照明で、いつもと違う輝き方をしている。
本番の時間が、着実に近づいていっているのを実感する。