あの夏の続きを、今
チューニング室で最後の音出しをする。
曲の中の難しい部分を何箇所か合わせる。
そして、最後に残った時間で、パートメンバー4人で円陣を組む。
松本先輩が声をかける。
「みんな、絶対最優秀賞取るぞーー!!」
「「「「おーーーーっ!!!!」」」」
そして、私たちはチューニング室を出て、舞台裏へ。
一歩一歩、歩いていくごとに、緊張が増していく。
私にできることは、もう、あのステージの上で、全力を尽くすことだけだ。
震える手で、祈るようにトランペットをぎゅっと抱きしめる。
前の方に見える松本先輩の背中からも、緊張が感じられる。
先輩のためにも、最高の演奏を届けないと。
3年間頑張ってきて、これで最後の演奏となる先輩のために。
私が心から尊敬する、先輩のために。
一緒に頑張ってきた後輩として、相応しい姿でいなければ。相応しい演奏を届けなければ。
そして、私たちのひとつ前の学校の演奏が終わった。
いよいよだ。
松本先輩が振り返って言う。
「みんな、頑張ろう!GOGO!!」
すると、その近くにいた女子の先輩が、「ダサっ!みんな、こんな人無視していいからね~」と言う。
「え~、ひどいよ~」と松本先輩。
「あはは…」
どんな反応をすればいいのか分からない私は、苦笑いになってしまう。
列が進み始めた。
先輩たちやカリンの後について、私はステージへと足を踏み入れる。
私たちの努力の集大成が、今、始まる。
最優秀賞を目指して────