lastletter~君からの最期の手紙~
「失礼しまーす。」

そう言って保健室に入るけど…先生はいないみたい。

「んっ…しょ…っと。」

とりあえずそーっとベットの上にその男の子を下ろす。

そうするとその男の子と目が合う。

うわ…キレーな人…。

焦げ茶色のサラサラな髪に、二重の綺麗な目、全体的にシュッとしてるなぁ…。

ペコリとその人があたしに会釈をするように頭を下げる。

…?恥ずかしがり屋なのかな?喋らないなんて。

あたしはガンガン喋るタイプで、人見知りなんてありえないぐらいだからそういう人の気持ちがわからない。

するとジェスチャーで何かを示しはじめた。

手のひらの上に何かを描く仕草をしている。

…なんか書くもんくれ、的な意味かな?

そう思ったあたしはすぐそばにあった紙と鉛筆を渡す。

すると、あたりだったらしくにこりと微笑む。

そこらへんの女子より可愛いんじゃ…、そう思っているとその紙を差し出した。

【ありがとうございます。】

几帳面で、男子とは思えない綺麗な字でそう書いてあった。

でも…どうして…喋らないんだろう?

「いやいやいや!あたしが、ボールぶつけたから、運んだけ。本当にそれだけ。」

きっと真顔なんだろうなーと思う。

本当に周りの女子が羨ましい。

可愛い反応ができるし…あたしなんて素っ気ない態度ばっかりだし、力も強いし…だから〝男女〟なんて言われるんだよね。

【僕なんて…ほっとけばいいのに…わざわざありがとうございます。】

なんで…とあたしは疑問に思った。

〝僕なんて〟どうしてこんな自分を貶すことを言うというか書くんだろう。

「いやいや!あっ…それよりボール、どこに当たった!?」

その男の子はお腹を指差す。

うわ…結構なとこに当てたね…あたしは。

「本当にごめん!」

【いいですよー、慣れていますし。】

顔を見ると乾いたような悲しい笑みを浮かべていた。

そしてまたしても疑問に思う。

〝慣れていますし〟ってどういうこと?

鈍臭くて、とは違う…嫌な感じがしたけど…触れてはいけない気がした。

「そういや、あなた名前は?」

すっかり聞くのを忘れていたのを思い出す。

【僕は、紺野 裕翔です。】

こんの…ゆうと、か。覚えておこう。

「あたしは、大倉侑芽!」

全然〝ゆめ〟って感じの女の子じゃないけど…ね…。

本当…どうしてこんなにも男勝りなのに〝ゆめ〟なんて名前なのか…。

【知っていますよ。1年の頃から。】

「え?」

あたしはどういう意味なのかわからなかった。

目立つ方だけど…せいぜいクラスの中だし…紺野裕翔、なんてクラスにはいなかった。

なんでだろう。

そういう風に疑問を抱え、もやもやとしていると

ーーキーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り響いた。














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