SUMMER PARTY NIGHT
有名なハイキングコースを使用しての肝試しは意外と学生時代を思い出させるらしく、同期の面々は嬉々とした表情を浮かべながらペアの紙を持っている相手を探していく。
「3番は……っと」
忍が自分と同じ番号を持っている相手を探していると、目の前に「3」と書かれた紙を見せている男が目に入る。
「……え」
「よろしく」
庄司は忍に会釈をしてポケットに手を入れた。
ポケットの中で紙がくしゃっと音を立てる。
「では、1番から順番に。ちなみにペアは手を繋いでくださーい!」
進行役の男子が悪戯っぽい笑みを浮かべながら言うと「えー」という声が上がりながらもみんな満更でもなさそうだ。
彼氏彼女持ちは微妙な表情を浮かべていたが、まあイベントだからと目を瞑っているようだ。
「……ん」
手を差し出されて、顔を見ると「ルールだから」と無理矢理に手を引かれた。
「……」
「ごめんなー。相手、俺で」
謝られると余計どうしていいのか分からなくなる。
もう許す許さないの問題ではない場所に来てしまっているのだ。
今更何を言えば良いのだろう。
どうすれば昔みたいに「変なことしないでよ」と軽口を叩きながら繋がれた手を握り返すことが出来るのだろうか。
辛うじて庄司が握っているから繋がれている手を眺めながら、忍は自分がどうしたいのか分からなかった。
あっという間に順番が来て、スタートする。
細流や小川のせせらぎが闇の中から聞きながら、雨水で出来た小さな水たまりを避けながら歩いた。
「なあ、大丈夫?」
「……」
「……忍?」
「ねえ……もう無理……」
思っていた以上に用意されているコースが怖くて、相手が庄司だということも忘れ、忍は泣き言を言い始めた。
「おまえ、変わってねーな……怖いのだめなの」
「うるさい……」
憎まれ口を叩くと同時に、お化け役の人が突然「わあっ」と出て来る。
「いやぁぁあああ!」
「うわっ!お前の声にびっくりしたわ!」
「もう無理、怖い!庄司ぃ……」
「大丈夫だから、落ち着けって」
「大丈夫じゃない……もう怖いよー」
本気で泣きじゃくる忍に対して苦笑いを浮かべながら庄司が優しく手を握る。
「本当に全く……」
そして優しく抱きしめて何度も「大丈夫だよ」と背中をトントンと叩きながら庄司は囁いた。
まるで大事な恋人を慈しむように。