SUMMER PARTY NIGHT
「気が変わったの?」
「そうじゃない」
「好きな男でもできた?」
「そうじゃない……!」
「じゃあ、何?」
このまま祥吾の影に取りつかれたまま、悠也を拘束したいわけではない。
先に進まなくてはならない。
「……悠也と一緒にいると、祥吾を思い出して辛いの」
祥吾の顔なんて、もう思い出せないくせに。
写真を見て、大事な思い出だったと思えるほど傷が癒えてるくせに。
「何だよ……それ」
さきほどまで抱かれていた身体が熱い。
嘘がばれてしまわないように、顔を背けた。
彼の人生を。
今度こそ大事な人の人生を守らなくてはならない。
あんなにも苦しんでいた自分を何もかも捨てて支えてくれた彼だからこそ、あの時泣き叫びながら「悠也が満足できるまで私、待ってるから」と言い切った彼女の場所へ彼は戻って行かなくてはならない。
そして出世もして、幸せな人生を歩むのだ。
「ごめん。悠也といるのが今、一番しんどい」
自分の言える最低な言葉を探し出して吐き出す。
まるで血の塊を吐いているようだ。
苦しい。
お願い一人にしないで。
言えるわけがない。
こんな依存しきった関係に、幸せな未来はない。
彼は光の当たる道へ。
あの時、ジュースを飲みたいとめぐみが我儘を言ったせいで、飲酒運転しているバイクと衝突事故に祥吾は巻き込まれてしまった。
真っ赤に染まった道路。
手にはめぐみが好きなジュースの缶が握られていた。
あの日からあのジュースは一滴も飲めなくなった。
「意味わかんねーよ」
「……分かってるでしょ。祥吾のこと悠也も思い出すの辛いでしょ」
「……」
「……」
静寂が2人を包んだ。
上を着て、ジーンズを履く。
「なあ、めぐみ」
「……」
「俺は、昔から。祥吾とお前が付き合う前からめぐみのことが好きだったんだ」
「……」
「……嘘じゃない」
むせび泣くような声色で、悠也は言った。