SUMMER PARTY NIGHT
冷たい水分がまるで乾いた砂に吸い込まれるように、体内に入っていく。
気持ちがいいほど、身体が渇いていた。
「おいし……」
静かに呟くと、浩志は笑って「頑張れよ」と作業に戻る。
その日は一日中バタバタで、気が付行けば太陽が西の水平線へ沈んでしまっていた後だった。
塩の香りとさざ波の音だけが紫色の空に消えていく。
「お疲れ様!今夜は飲み放題予約したよ!」
社内の幹事担当の社員が笑顔で疲れ切った表情を浮かべた社員たちに声をかける。
「やったー!疲れたー」
「早くビール飲みたい」
口々に言う面々に浩志が「片づけ終わってからなー」と残酷な一言を放った。
「えー!」
「えーじゃないぞ。散らかしたら片づける。小学校、中学校と義務教育で習ってきただろー。はい、手を動かす」
まるで先生のように指示をする浩志にブツブツ言いながらも、みんなビールが早く飲みたいという一心で身体を動かす。
ご褒美があると人間というものは、どんなに疲れていても早く動けるようで先ほどまでへばっていた人たちも必死に手伝っていた。
「終わらなかったら連帯責任な」という浩志のドSな一言があったからだろうが。
後は借りてきたものを車で運ぶだけの状態となり、終わった組はさっさと居酒屋に向かって走っていく。
「おい、星野」
「なんですか」
嫌な予感がしつつ、振り返ると浩志が「お前は残って俺を手伝え」と容赦のない一言を放たれた。
「私手伝いますよー。星野さんはビール飲んでゆっくりしてくださぁい」
浩志を狙っている女性社員の女の子が首を傾げながら、甘い声を出す。
やはり人気者なのだなと思いつつ、居酒屋に向かおうとすると「佐藤さんは今日一番頑張っていたから、俺的には早くゆっくりしてほしいな。これ以上働かせるのは上司として心配だし。」とやんわり拒絶した。
「えー、でもぉ」
佐藤さんの気持ちは痛いほど分かった。
好きな男とは一緒にいたい。
当たり前の感情だ。
だが、浩志はあまり興味がないようで「星野下戸だろ。ジュース買ってやるよ。来い」と腕を引っ張られてしまった。
不満気な表情の佐藤さんは、他の男性社員が狙っていたらしくあっさりとフォローに入る。
佐藤さんを気の毒に思いつつも、浩志が自分を選んだことは素直に嬉しかった。