[完]その口、利けなくしてやるよ。
「おかえりなさい……って、どうした!」
中にいたのは、地面であぐらをかいてたかわいい小さめの男の人。あたしを見るなり慌ててたけど、女の人とあたしだけ中の部屋に素通り。
幹部室だった。
フカフカのソファに座らせられた。
「名前は?って、名乗りもしないで失礼だなあたし。」
多分気が安らぐように気を遣ってくれてたんだと思う。
そして、
「あたしは一草 千咲ーいちぐさ ちさきー、あー…暴走族なんだけど……」
少しどう説明するか困ったというような顔をしていた
「えっとー…怖いか?」
苦笑いして聞いてくるその顔は、不安そうだったから、何かあったんだと思う。
軽く首を横に振ると、気が抜けたような声で、そっか!と言っていた。
「あんたは?名前」
「……り」
「ん?」
「と、……ど…あかっ、……り」
途切れ途切れで、あたしの声を聞こうと耳を寄せて聞いていたけど、多分聞こえずらかったハズ。
「藤堂……あかり?」
藤堂だけ、知っていたのはやっぱり、藤堂組と藤堂財閥だからか。
「あ、これか」
あたしのバッグについていた名前のタグで、漢字を確かめてた。