[完]その口、利けなくしてやるよ。


それが、兄の築いてきた、守ってきていた〝愁華〟だった。こんなにも優しく暖かいところを築いてきたんだと、初めて家族以外の温かさに触れた気がした。


「明星……でいいか?」


ふと、誠也さんがそう訪ねてきた。


こくんと頷いたのを確認してから、


「…いきなりだが……。明星、明星は、今多くのヤツらに狙われている。正直その名でやっていくのには無理がある。……俺がいいと言うまで、偽名を使ってもらう。」


「明星、あんたの名前。あんたは、〝久賀 苺ーくが いちごー〟だ!しばらくは外に出ずあたしと過ごす!出る時は、幹部揃っていく。な?」


その日から、あたしの第二の人生が始まった。新しく、苺として。

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