[完]その口、利けなくしてやるよ。


「バカ」


あたしの一言に、目を見開いてあたしを見た。



「奏風のっ、ばかっ!」


気づけば奏風に抱きついて泣いていた。



あたしを傷つけたのは、彼。



けど、そんなの京介である彼。


今、私の前にいるのは、奏風だから。



「奏風っ」


「ふふっ、よかったですねぇ、奏風?自分が傷つけたはずの彼女が、こうして奏風の名前を呼んで抱きついてくれる。」


「……っ」



「そろそろ、京介に戻ってもらいましょうかねぇ」



その言葉で、あたしはすぐさま離れた。


そして、涙を拭った。



あたしが今日話に来たのは、奏風じゃない。



京介だ……


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