[完]その口、利けなくしてやるよ。

「あか……りっ」


声を振り絞って、あたしを呼んだ。


懐かしいなぁ、この声は今聞けば、奏風だけど。


「ん?」


「俺が、怖くないのか?」


「あたりまえじゃん!そりゃさ、ずっと怖かったよ?会うことも。けど、やっぱりこのままじゃダメだと思ったから。」


「……ごめっ…ほんと……奏風として明星の前に現れた時、明星とまた会えて、嬉しさと驚きと……恐怖があったんだ。」


俺にそんな資格ないのにおかしいだろ?なんて苦笑いして言う。



「こんなに、恐怖を植え付けてしまったんだって。……ほんとにごめんなさい」



「奏風、あたしね?奏風のことが好きだったの。……けどさ、やっぱり同じ人を好きになるんだね!奏風は結局、京介だった」



「顔立ちも変わって、声も低くなって……あのままじゃやっていけなくて」



今思えば、奏風には京介の面影とか共通部分とか、たくさんあることに気づいた。

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