[完]その口、利けなくしてやるよ。


明星。


本当は出会った時知ってたんだよ。



「それから、明星が転校してくるって知って、校長に頼んで、世話係にしてもらった。」



明星のことを。



明星は、引くでもなく、軽蔑するでもなく、ただ……



ただ、切なそうに俺を見てたんだ。今にも泣いてしまいそうな目で。


手を伸ばして、今すぐ抱き寄せたかった。



「だから、だから…明星の過去も。何があったのかも知ってて当然だったんだ」



覚悟ができたらお互い話すって約束。



あれは、俺自身の覚悟だった。



桜庭京介が俺であるということを知ったら、きっと居なくなってしまう。


二度も失うことがとても怖くて、臆病な俺には話せないと思った。



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