【短】お前に首ったけ
「ねぇ、燈耶?」

「んあー?」


途中のコンビニでアイスでも買うかーと言いながら歩いていたら、くんっと手を引かれた。
隣にいたと思った翠は俺の少し後ろに立ち止まってる。


「どうしたんだよ?」

「燈耶はさ、自分に自信、ある?」

「は?」

なんだかいつもとは違う雰囲気を醸す翠を宥めるように、繋いだ手をやんわりと握り直すと、不安そうな翠が俺の方を向いた。

「燈耶はさ、勉強も出来るし、生徒会長とかしちゃうし、先生からも信頼されてるし…その…モテるし…自信あるのかなって思って…」

「…翠は?…翠は自信ねぇのか?」

「んー…実は分かんないんだよね…なんか、自信なくなっちゃったっていうのかなぁ…今、結構折れてる」


俺は、それがなんでかなんて不躾な事は聞かなかった。
何故かと言うと、ウワサで聞いたんだ。
何処ぞのクラスのヤローかまでは知らねぇが、翠に告白してフラれた腹いせに、悪質な嫌がらせをしてるって事を。
元々繊細なこいつの心が、それでどれだけ傷付くか…本気で好きなら、容易く分かるようなものの。
だから、俺は嫌なんだ。


こいつが…翠が、一人で色んなもんを背負ってるのが。

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