【短】お前に首ったけ
じんわりと涙を溜めているけど、それは拒絶のものじゃなくて…もう少しで聞けそうな、言葉。
だけど、こいつはいやいやをするだけで、それ以上は可でも不可でもなく…ただ、俺からは離れようとしない。
「はぁ…やっぱ、俺お前のこと本気で好きだわ…」
引き寄せたままの体から伝わる、俺のモノじゃない温度に、眩暈がしそうだった。
髪も、口唇も、どこもかしこも柔らかくて、甘くて…そんでもって、ちょっと力を込めただけで壊れてしまうんじゃないかというくらいの華奢さ。
今までも、何人か付き合った事はあるけど、こうも「女」を感じさせるのはこいつが初めてで…可愛くて、可愛くて…マジ、泣きそうなくらい愛しい。
「…好きって言えよ、いい加減」
「馬鹿みたい、何言ってくれちゃってんの?」
そう、睨み付ける癖に、しっかりと抱き締められたまま動こうとしない翠に、俺はこれからも首ったけ。
「好き、っていうまで離さねぇから、しっかりついて来いよ?」
「ちょっ…ば、か!もう!ここ外だから!盛んないでよ!」
「じゃあ、中ならイイんだな?」
にやり、と笑う俺にまた赤くなる翠。
もう、答えは出てるけど…必ず言わせてみせる。