氷のヒカリ
初めてかけられた言葉が嬉しくて、涙が流れた。
もう何年も流れてなかったから、流れないものだと思っていたのに。
「なんだよ、これ……」
拭っても拭っても涙が止まることはなかった。
転校生にそれを見られたくなくて、背を向けた。
「今まで辛かったんだね。これからは、私がいる。私は氷室くんに生きてほしい」
それなのに、転校生は俺の気持ちなんてお構いなしで、俺を前から抱きしめた。
俺より十センチ以上小さいはずなのに、そのときの彼女は俺よりも大きく見えた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
高校生にもなって、こんな言葉をかけられるなんて、屈辱でしかなかった。
だが、それは普段の俺でいるときだ。
今はこれが無性に嬉しかった。
昇降口を出て、俺は足を止めた。
「あの、さ。さっきの……」
すると、彼女は振り向いて優しく微笑んだ。
「安心して、誰にも言わないから」
「……ありがとう」