氷のヒカリ



だが、この仕事を引き受けるわけにはいかない。

せっかく見つけた俺の生きる意味を、自分でなくしたくない。



「それは断じてないです。ですが、この仕事は承れません」



そう言って、笑里さんに資料を突き返す。



「氷……上司である私に逆らうって、会社に逆らうことなんだよ?わかってる?」


「はい。知り合いを殺すなんてもう嫌なんですよ。なので、この会社辞めます」


「本気で言ってる?」



笑里さんがどんどん笑顔になっていく。

これは彼女の特徴で、怒れば怒るほど、笑顔になる。

コードネームもこれに由来していると聞いたことがある。



しかし、ここで素直に引き下がるわけにはいかない。



「当たり前です。俺から殺しを取ったら何も残らないけど、それでも生きていけるってわかったんで。なら、もう罪を犯すのは辞めようと思ったんです」


「……裏切り者は殺される。覚悟しておきなさいよ、氷室仁」



この会社で本名で呼ばれたら、解雇決定。

そういう決まりらしい。


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