氷のヒカリ
ゆっくり目を開けると、目の前に苦しそうな彼女の顔があった。
「え……?」
「あれ、月影彩羽のほうを先に殺っちゃった?」
彼女の腹部に笑里さんが使っていたナイフが刺さっている。
「なんで飛び出した!」
彼女の背中を支え、抱きかかえる。
「だって……氷室くん、は……やっと人生やり直せるところだったんだよ……?……終わらせたら、ダメだもん……」
傷は想像以上に深いらしく、彼女は絶え絶えに言葉を発した。
「俺はお前がいるから……!」
「そう、だ……氷室、くん……私の、名前……呼んで……?」
「いくらでも呼んでやるよ、彩羽。だから、頼む……死なないでくれ……」
彩羽の頬に、俺の涙がこぼれる。
「ごめん、ね……そのお願い、聞け、ないや……」
彩羽は俺の涙を拭うために手を上げようとしたが、その手は俺の頬に届く前に、床に落ちた。
「いろ、は……?彩羽!なあ、彩羽!頼む、目を覚ましてくれ……彩羽!」
どれだけ呼びかけても、彩羽は目を開かなかった。