氷のヒカリ
俺は社長室に向かった。
社員だったときはノックをして入っていたが、あいにく、そんなことをしている暇はない。
勢いよくドアを開けると、社長は余裕を見せてきた。
「遅かったな、氷室仁」
社長椅子から立ち上がった彼の気迫に、背筋が凍る。
「なあ……もう辞めろよ……いらない人を、殺しで抹殺するなんて、今どき流行んねえよ」
「君に指図される義理はないはずだよ。それに、今さら抵抗したって遅いんだ」
「遅くても!死なない限り、何度でも人生やり直せるんだよ」
「へぇ……君、面白いこと学習したみたいだね。何十人も殺してきた君の人生は決まってるだろう。刑務所の中だ」
「それでも、やり直す。間違ったなら、やり直せばいいんだ」
なにを言っても折れない俺に痺れを切らしたのか、社長は深いため息をついた。
「どっちにしろ、私は辞めないよ。だが、君には一切関わらないことを誓おう」
「……絶対だぞ。俺は二度と、殺しはしねぇからな」
「もちろんだ」
口約束なんて何年か経つと無意味となるだろう。
それでも、何もしないよりはマシだった。
俺はその場から立ち去り、その足で警察に向かった。