氷のヒカリ



俺は社長室に向かった。



社員だったときはノックをして入っていたが、あいにく、そんなことをしている暇はない。



勢いよくドアを開けると、社長は余裕を見せてきた。



「遅かったな、氷室仁」



社長椅子から立ち上がった彼の気迫に、背筋が凍る。



「なあ……もう辞めろよ……いらない人を、殺しで抹殺するなんて、今どき流行んねえよ」


「君に指図される義理はないはずだよ。それに、今さら抵抗したって遅いんだ」


「遅くても!死なない限り、何度でも人生やり直せるんだよ」


「へぇ……君、面白いこと学習したみたいだね。何十人も殺してきた君の人生は決まってるだろう。刑務所の中だ」


「それでも、やり直す。間違ったなら、やり直せばいいんだ」



なにを言っても折れない俺に痺れを切らしたのか、社長は深いため息をついた。



「どっちにしろ、私は辞めないよ。だが、君には一切関わらないことを誓おう」


「……絶対だぞ。俺は二度と、殺しはしねぇからな」


「もちろんだ」



口約束なんて何年か経つと無意味となるだろう。


それでも、何もしないよりはマシだった。



俺はその場から立ち去り、その足で警察に向かった。


< 22 / 23 >

この作品をシェア

pagetop