氷のヒカリ
一限目の授業で転校生が教科書をまだ持っていないということが発覚し、隣の席である俺が見せるということになった。
だが、いつも授業を聞いていないし、転校生と関わりたくなかったがために、教科書を貸すと、俺は机の上に突っ伏して寝た。
「氷室くん!」
放課後になり、教室を出ようとすると、転校生に呼び止められた。
「……なに」
気は進まなかったが、足を止める。
今日初めて声を出したため、まともに声が出なかった。
「教科書、貸してくれてありがとう。これ、お礼」
そう言って差し出す手の上には飴が乗っている。
「いらない」
そう言ったのに、転校生は制服のポケットに入れてきた。
「人の好意はありがたく受け取ってよ。ホントにいらなかったら、私が見てないところで捨てていいから」
それが言えて満足したのか、転校生は今日出来た友人らしき人だかりに混じった。