氷のヒカリ
「そうだね、頼まれてない。でも、ほっとけなかったんだもん。こんな世界、なくなればいいっていう目をしていた氷室くん」
自覚していなかったことを指摘されると、なんとも言えない気持ちになる。
「ほっといたら、いつか氷室くんがこの世から消えてしまうような気がしたの」
「人間、いつか死ぬけどな」
「でも、まだ死ぬには早いよ。この世にはまだ知らないことがたくさんある。それを見ないで死ぬなんて、もったいない」
「俺には、生きる資格がないから」
「生きる資格がない人なんていない!」
俺の言葉に苛立ったのか、転校生は声を荒らげた。
転校生の声は誰もいない教室、廊下に響き渡る。
「人間の扱いっていうのは平等じゃないけど、生きる資格はみんな平等なの。それだけは、平等じゃないといけないんだよ」
「でも、俺にはなにもないし」
殺しの才能しかないんだ。
そう思うとなんだか悔しくて、拳に力が入った。
「なにもなくたって、生きていけるよ。だって、みんな何も持たずに生まれてきたんだもん。氷室くんは、持つものをまだ見つけられてないだけ。これから見つけたらいいよ」